けんせつる
NATMって何?山岳トンネルはどうやって掘るの?
この記事の要点
NATM工法(New Austrian Tunnelling Method)は、地山(掘削する地盤・岩盤)が持つ固有の強度を積極的に活用しながら、吹付コンクリート・ロックボルト・計測管理の3つを組み合わせてトンネルを安全に掘進する工法です。
施工管理では吹付コンクリートの品質管理と計測データに基づく支保の判断が特に重要です。計測結果を見ながら支保パターンを変更する「PDCA的な施工」が特徴です。
NATMは日本の山岳トンネルで広く使われている工法です。3つの要素を中心に整理しましょう。
NATMの特徴は「地山自体をトンネル構造の一部として活用する」考え方です。
そのために次の3つを組み合わせて使います。
| 要素 | 役割 | 施工管理の確認ポイント |
|---|---|---|
| 吹付コンクリート(吹付けコンクリート) | 掘削面に即座に吹き付けて地山の緩みを防ぐ一次支保 | 厚さ・強度・リバウンド率の管理 |
| ロックボルト | 地山に打ち込んで地盤を補強し、崩れを抑制する | 長さ・本数・配置・定着力の確認 |
| 計測管理 | 地山の変位・収束状況を計測して支保の適正性を確認する | 天端沈下・内空変位の計測と管理基準値との照合 |
NATMにおける3要素(吹付コンクリート・ロックボルト・計測管理)の役割と施工管理の確認ポイントについては、国土交通省の山岳トンネル工事施工管理指針(下図)でも確認できます。
ザックリ言えば、「地山に吹付コンクリートとロックボルトで一次支保をして、計測で状態を確認しながら施工を進める」工法です。
NATMの基本的な施工手順は次の通りです。
吹付コンクリートはNATMの一次支保として即時に地山を安定させる材料です。品質管理が重要です。
NATM最大の特徴が計測管理です。「計測なきNATMはない」と言われるほど重要です。
例えば、計測で内空変位が急増している場合、予想外の軟弱地山に当たっているサインかもしれません。
この場合は追加のロックボルト打設・吹付コンクリートの増厚を行い、変位が収束するまで次の掘削を進めないというPDCAの判断が必要です。
天端沈下・内空変位の計測管理と管理基準値(注意・警戒・限界の3段階)の確認については、国土交通省の山岳トンネル工事施工管理チェックシート(下図)でも確認できます。
山岳トンネルでは、掘削中に当初の設計と異なる地山条件(断層・湧水・軟弱地山等)に遭遇することがあります。
混同しやすい用語の整理
一次支保はNATMで掘削直後に施工する吹付コンクリート+ロックボルトによる仮の支保。二次覆工(本覆工)は変位収束後に内型枠コンクリートで施工する永久構造物。一次支保が落ち着いてから二次覆工を行う。
NATMの計測管理はリアルタイムの地山変位を追跡して支保の適正性を判断するもの。アンカーボルト等の精度確認は一点一点の設計値との照合。目的と手法が全く異なる。
NATMの3つの主要要素は何か?
①吹付コンクリート(一次支保として掘削面を即時安定させる)、②ロックボルト(地山を補強して崩れを防ぐ)、③計測管理(変位を計測して支保の適正性を確認する)。
NATMで計測管理が重要な理由は何か?
地山の変位状況を確認しながら支保の適正性を判断する(追加支保の必要性・次掘削への移行判断)ため。計測データが収束しない限り次の掘削に進めないため、NATMの施工判断の根拠になる。
計測値が管理基準の「限界値」を超えた場合はどうするか?
掘削を中断し、設計者・監理者と対策を協議する。追加のロックボルト打設・吹付コンクリート増厚等の対策を決定してから施工を再開する。
NATMの二次覆工はいつ施工するか?
一次支保後の計測で変位が収束したことを確認してから施工する。変位が収束していない状態で二次覆工を施工すると、覆工コンクリートに不要な力がかかる。
掘削中に当初設計と異なる地山状況に遭遇した場合、最初にすべきことは何か?
設計者・監理者に速やかに書面で報告する。支保パターンの変更・掘削方法の変更は設計者の指示を受けてから実施する。自己判断で施工を継続しない。
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
> シールド工法の施工管理を確認する
> 根切り・掘削工事の施工管理を確認する
参考資料
・土木学会「山岳トンネル工法設計施工指針」
・国土交通省「トンネル工事における計測管理指針」
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人からのコメント
NATMで施工管理上注意したいのが「計測データを記録はしているが分析していない」問題です。
毎日数値を記録しているだけで、変位の傾向(収束しているか・加速しているか)を見ていなければ計測管理の意味がありません。変位速度(1日あたりのmm数)を日次でプロットして傾向を把握する習慣が重要です。
もう一つは地山状況変化の報告を遅らせることです。
「自分で判断して追加支保を打ってから報告」では事後報告になり、設計者が判断する機会を失います。異変を感じたら即報告が原則です。