けんせつる
重力式とL型擁壁って何が違うの?水抜き孔はなぜ設けるの?施工管理ではどこを確認するの?
この記事の要点
擁壁は傾斜地や段差部分で土砂崩れを防ぐために設ける土留め構造物です。重力式(自重で土圧に抵抗)・逆T型・L型(底版で安定)などの種類があります。
施工管理では水抜き孔の位置・間隔の確認・根入れ深さの確認・竣工後の沈下・傾斜の観察が主な確認事項です。高さ2mを超える擁壁は建築基準法で確認申請が必要です。
擁壁の種類と施工上の確認ポイントを整理しましょう。まず種類の全体像を把握してから、確認ポイントに進むと理解しやすいでしょう。
| 種類 | 仕組み | 特徴 | 主な適用 |
|---|---|---|---|
| 重力式擁壁 | 擁壁自体の重量で土圧に抵抗する | シンプルな形状。小~中規模に適する | 高さ3m以下の土留め |
| 逆T型擁壁 | 底版(基礎部分)が広く、底版上の土重量も利用して安定する | 高さが増しても安定性が高い。鉄筋コンクリート製 | 中~高規模の土留め |
| L型擁壁 | 逆T型の片側底版を省略した形。竪壁と底版がL字状 | 隣地に近い場所や敷地境界付近に使いやすい | 敷地境界付近の土留め |
| 控え壁式擁壁 | 擁壁の背面に控え壁を設けて安定性を高める | 比較的大規模の土留めに使われる | 高さ5m程度の土留め |
ザックリ言えば、「高さと敷地条件によって擁壁の形を選ぶ」わけです。設計で種類が決まったら、その種類に合った施工確認を行うということです。
擁壁工事の施工管理で確認すべき主な項目は次の通りです。ここが現場確認の要ですね。
例えば、水抜き孔が設計通りに設けられていない擁壁を竣工させてしまうと、雨天後に背面に水が溜まり、土圧が増大して擁壁が転倒する事故につながりかねません。確認は必ず行いましょう。
ザックリ言えば、「水をうまく逃がす仕組みと、しっかり根を張る深さが擁壁安全の要」です。
擁壁の設計に必要な地耐力を確認するための地盤調査(標準貫入試験・ボーリング調査等)の方法は、昭和46年建設省告示第111号(下図)第一に規定されています。
擁壁に関する建築基準法上の主な規定は次の通りです。ここは見落としがちなところですね。
ザックリ言えば、「高さ2mが一つの境界線で、それを超えると確認申請が必要になる」ということです。
高さ2mを超える擁壁の建築確認申請・検査手続きは、建築基準法(下図)の規定に基づいて進めます。
混同しやすい用語の整理
擁壁は永久的な構造物として土砂崩れを防ぐ壁(完成した構造物として残る)。土留めは工事中の掘削部分を一時的に支える仮設の構造(掘削完了後に撤去することが多い)。意味が重なる場合もあるが、仮設か永久かで使い方が異なる。
重力式擁壁は擁壁本体の重量で土圧に抵抗する。底版が狭く、コンクリートや石積みで作られる。逆T型擁壁は広い底版を持ち、底版上の土重量も安定力として利用する。鉄筋コンクリート製で、より高い擁壁に適する。
擁壁の水抜き孔を設けない場合にどのような問題が生じるのか?
擁壁背面に雨水が溜まって水圧が高まり、土圧と合わさって擁壁が転倒するリスクがある。水抜き孔は背面の水圧を逃がすために設けるもので、設置漏れや詰まりは重大な不具合につながる。
高さ2mを超える擁壁に必要な手続きは何か?
建築基準法第88条・施行令第142条により確認申請が必要。審査・確認を経て着工できる。宅地造成工事規制区域内では宅造法の許可も必要な場合がある。
逆T型擁壁が重力式擁壁より高い擁壁に適している理由は何か?
底版が広く、底版上の土重量も安定力として利用できるため、高さが増しても転倒・滑動に対して安全率が確保しやすい。鉄筋コンクリート製なので自重だけでなく引張力にも対応できる。
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
参考資料
・建築基準法第88条・建築基準法施行令第142条(擁壁)
・宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法、2023年5月施行)
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人からのコメント
擁壁工事でよくあるのは「水抜き孔の設置を忘れる」または「型枠解体後に水抜き孔が詰まっていることに気づかない」ケースです。型枠撤去後に水抜き孔の通水確認(棒を差し込んで詰まっていないか確認する)を必ず行いましょう。
もう一つは「根入れ深さが不足している」問題です。
掘削底面が固い地盤と思っていたのに実は軟弱だったケースがあります。掘削後に底面の地盤を確認し、設計通りの支持地盤に達しているかを判断することが重要です。