けんせつる
回し溶接って隅肉溶接の端部を「回す」こと?なぜ必要なの?省略してもいいの?
この記事の要点
回し溶接(まわしようせつ)は、隅肉溶接の端部で溶接線を部材の端を回り込んで一定長さ続ける処理です。溶接端部からの応力集中・割れを防ぐために行います。
設計図書で回し溶接が指定されている場合は省略できません。施工管理では回し溶接の長さ(設計指定値または2倍サイズ以上)と割れ・不良の有無を確認します。見落としやすい箇所のため端部を重点的に確認することが重要です。
回し溶接は「なんとなく端部を回す」のではなく、構造的に必要な処理です。その目的と確認方法を整理しましょう。
隅肉溶接は端部(溶接の始終点)で断面が急に変化するため、ここに応力が集中しやすくなります。
回し溶接をしないで端部で溶接を終わらせると、次のような問題が生じます。
ザックリ言えば、「端部でビタッと溶接を止めると、その端が弱点になる。端を少し折り返して回し込むことで弱点をなくす」ということです。
回し溶接の長さは設計図書で指定されますが、指定がない場合の一般的な基準は次の通りです。
例えば、サイズ8mmの隅肉溶接の回し溶接長さは最低16mm(8×2)以上必要です。
回し溶接は端部の小さな箇所のため、外観検査で見落とされやすいです。溶接検査では端部を意識して重点的に確認します。
混同しやすい用語の整理
回し溶接は溶接線を端部で折り返して強度・耐久性を確保する溶接処理。端部処理(グラインダー仕上げ)は溶接終端のクレータや鋭い形状をグラインダーで滑らかにする仕上げ処理。別の処理だが両方が必要な場合もある。
回し溶接は端部を折り返して応力集中を防ぐ処理。スカラップは梁ウェブと柱フランジの溶接部に干渉しないよう設けた切り欠き。どちらも溶接品質向上のための措置だが目的が異なる。
回し溶接はなぜ行うのか?
隅肉溶接の端部で応力集中が生じて割れが発生しやすくなるのを防ぐため。端部でビタッと溶接を止めると終端が弱点になるため、端を折り返して回し込むことで応力集中を緩和する。
JASS 6 による回し溶接の最低長さの目安は何か?
サイズ(脚長)の2倍以上。設計図書に指定がある場合はその指定値に従う。サイズ8mmなら最低16mm以上の回し溶接が必要。
回し溶接を省略できる場合はあるか?
設計図書で指定がない箇所は省略できる場合がある。ただし設計図書で回し溶接が指定されている場合は省略不可。施工前に設計図書の溶接記号を確認して回し溶接の指定がある箇所をリストアップしておく。
> 隅肉溶接の検査方法とは?を確認する
> 鉄骨溶接の施工管理とは?を確認する
RC・鉄骨の施工管理はRC・鉄骨の施工管理にまとめています。
この用語が問われた過去問
参考資料
・JASS 6 鉄骨工事(日本建築学会)溶接工事の節
・公共建築工事標準仕様書(建築工事編)第7章 鉄骨工事
※ この記事の法令確認日:2026年5月
管理人からのコメント
回し溶接で気をつけたい問題として「省略されていることに気づかない」ことです。
特にスチフナー(補強板)の端部など細かい箇所で省略されやすいです。設計図書の溶接記号に回し溶接の指定があるかどうかを確認し、あれば施工後に必ず確認するリストに入れておくことが大切です。
もう一つは「回し溶接の長さが不足している」ケースです。
端部まで溶接したつもりが5~6mmしか回っていない、というケースがあります。サイズ2倍以上の長さを実測で確認することが重要です。